触手に襲われた妖精さんのおはなし

触手に襲われた妖精さんのおはなし




  ゴプゴプッ……。

 そんな、空気と水の決して混ざり合わぬ音が聞こえる。
 音は重く、低く。水に粘着性が有る事が分かる。
 薄明かりの射した森の中、甘い吐息が響いては消える。
 青い髪と蒼い瞳。透かした空のような羽を持つ一人の妖精。
 青妖精は今、汚辱にまみれていた。

 静脈までも透けて見えそうな白い肌の上、白い粘着質の精液がかけられている。
 半透明のそれは粘り、乾くとバリバリになる。
 腹部と頭、口元を精液に塗りたくられた青妖精の瞳は、光を射さず快楽に濁っている。
 口元にはほうけた様な笑み。
 泣きそうなくせに口元が笑う。

 表情は妖しく、しかしそれ以上に何かが歪だった。


  ごぷりっ。

「ん……あぅうっ」

 再び空気音と共に、青妖精の膣から大量の精液があふれる。
 濃い白色と、黄色の種子。
 大きさの不揃いな種子が、青妖精の膣を削った。
 快楽に我を失った青妖精は、背筋を駆け抜ける快楽に対し正直だった。
 頬を朱に染め、口元から涎を垂らし、目には潤みが増す。
 弱々しい吐息は植物が動く度に快楽の悲鳴へと変わる。
 誘われたかのように植物は再び膣へ。
 何度も、執拗に、子孫を残そうと本能に従う。

「ん、あっ、くあああぁっ!」

 蕩けた脳は言葉を作り出さない。
 最も原初で、獣じみた快楽の悲鳴。
 如何なる生物であろうとも興奮せざるを得ない本能を訴える声。
 響く、響く、響く。
 水音よりもなお大きく、残響するように森を駆け抜ける。
 鼻がかって、喘ぎすぎた喉はかれ果て、それでも全身を震えさせながら声を出す。

「んあっ、んあっ! んぎっ――――!」

 ドクリ、と植物の先が膨れた。
 人間にしてみれば拳ほどにもなる大きさ。
 それを妖精は容易く食らい、締め付ける。
 やわやわと蠕動するように。子宮へと運ぶように。
 咀嚼し、舐めまわし、再奥へと誘う。
 膨らんだ植物の先は潰れるようにして。

 そして再び、精液と種子が放たれた。


―――白濁の精液には種子が孵化するだけの栄養に満ちている。
   一週間の時を掛けて、種子はこの世に生を受ける。
   青妖精の膣の中、その体積は徐々に膨らみ、親植物と同じ様に暴れ狂うだろう。
   蹂3躙し、最後の快楽を与えた植物は、新たな獲物を探し徘徊する。
   最後に残るのは壊れた母体だけとなる。



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